「控除できる」の意味
教育資金を時間をかけて準備していくために、学資保険の加入とあわせて、加入している保険の見直しをしてみるのはいかがでしょうか。
保険の払い込み金額や受け取り金額には「控除」が上限まで適用されます。
確定申告をするときや年末調整のときに、控除が適用されると税金の負担が軽くなることはご存知かと思います。
ですので、保険についての筆者の基本的な考え方は、「控除」を受けられるギリギリの額で加入するのが得策だということです。
「控除」には「所得控除」と「税額控除」があり、「所得控除」は課税対象となる所得金額を減らすことができる控除、「税額控除」は税金そのものを減らすことができる控除です。
個人事業の人は確定申告で、会社員は年末調整で記入します。
会社員の場合は、必要に応じてさらに確定申告や還付申告をすることも。
「所得控除」の種類および適用になる人や事例は次のとおりです。
14種類あります。
- 雑損控除:災害、盗難、横領によって住宅家財などに損失が生じた人
- 医療費控除:多額の医療費(10万円超)がかかった人
- 寄附金控除:国や公益法人などに特定の寄附金を支払った人(ふるさと納税など)
- 社会保険料控除:国民健康保険料、国民年金保険料、厚生年金保険料、介護保険料、後期高齢者保険料などを負担している人
- 小規模企業共済等掛金控除:小規模企業共済掛金、確定拠出年金などの支払いのある人
- 生命保険料控除:生命保険、個人年金、介護医療の保険料の支払いのある人
- 地震保険料控除:地震保険などの損害保険料の支払いのある人
- 寡婦(寡夫)控除・ひとり親控除:扶養親族(子どもを含む)のいるひとり親の人
- 障害者控除:自分や控除対象配偶者、扶養家族が障害者の人
- 勤労学生控除:納税者自身が勤労学生に該当する人
- 配偶者控除:合計所得が48万円以下の配偶者がいる人
- 配偶者特別控除:特定の要件を満たす配偶者のいる人(所得に応じて控除額が変わる)
- 扶養控除:合計所得が48万円以下の控除対象扶養親族がいる人
- 基礎控除:すべての人(基礎控除は48万円)
「税額控除」が適用される人と事例は次の5つです。控除額がそのまま直接所得税から差し引かれ
ます。
- 住宅ローン控除:住宅ローンを組んで、マイホームを新築・購入・増改築した人
- 配当控除:配当所得のある人
- 外国税額控除:納付した外国所得税などがある人
- 源泉徴収税額:会社などを通してすでに支払った所得税と復興特別所得税を控除できる
- 災害減免額:自然災害や火災などで、住宅や家財に損害を受けた人
学資保険の払い込み額は、所得控除の中の「生命保険料控除」として控除できます。
生命保険料控除の内訳
2012年から生命保険料控除の所得控除限度額は、全体で所得税が12万円、住民税は7万円となりました。
この生命保険料控除は、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の3つに分散できます。
- 一般生命保険料控除:生存または死亡に基因して一定額の保険金・その他給付金が支払われる保険料。死亡保険、養老保険、学資保険など
- 介護医療保険料控除:入院・通院などにともなう給付される保険料。医療保険、がん保険、介護保険など
- 個人年金保険料控除:個人年金税制適格特約の付加された個人年金保険契約に関わる保険料。個人年金など
所得控除額はそれぞれ4万円で合計12万円が上限で、住民税の限度額はそれぞれ2万8000円ですが、合計7万円が上限です。
生命保険料控除額から保険料を見直そう
繰り返しになりますが、保険について筆者は、基本的には「控除」を受けられるギリギリの額で加入するべきだと思っています。
なので、所得控除限度額のその控除額ギリギリで組み立ててみましょう。
まずは、学資保険を最優先で決めます。
学資保険といえば〝教育資金の貯蓄〟といったイメージが強く、生命保険という印象は薄いかもしれません。
しかし学資保険は、教育費の積み立てという「貯蓄」の側面と、契約者である親に万が一のことが起こった場合に以降の保険料の払い込みが免除になるという「生命保険」の側面を兼ね備えていることから、学資保険の分類は一般生命保険料控除です。
学資保険を月々1万円、年間約12万円の保険料で支払い続けている場合でも、所得税4万円、住民税2万8000円の生命保険料控除「一般生命保険料控除」の上限に該当します。
残る上限枠は「個人年金保険料控除」「介護医療保険料控除」です。
この2枠で、所得税上限額まで残りぞれぞれ4万円、合計8万円分。
住民税上限額までは合計4万2000円分。
このギリギリの中から自分に適した保険を選びます。
「一般生命保険料控除」は上限額に達したので死亡保険、養老保険、学資保険は除外。
「介護医療保険料控除」に相当する医療保険、がん保険、介護保険などから所得税控除の年間4万円分で収まる保険を探してみましょう。
おすすめは都道府県共済です。
運営している全国生協連は、厚生省が認可している団体で、月々の掛け金が定額なのに保障が厚いのが特徴といえます。
割戻金もあり、2020年には払込金の36%である8600円が戻りました。
ベースは月々2000円から。
死亡保障に加え、健康保険を考慮して入院費用も保障されるタイプと、入院リスクに備えた入院重視のタイプがあります。
両方とも「介護医療保険控除」に当てはまるので、月々2000円で2万4000円。
プラスアルファで1000円程度のがん保険特約もしくは3大疾病特約を付けても、所得税控除上限の4万円には届きません。
住民税控除は2万8000円までなので、そこを考えて調整してもよいでしょう。
あとは個人年金の「個人年金保険料控除」適用の上限分をどこかで探すことにします。
実際に探してみると、29歳以下なら月々3000円から始められる個人年金保険を見つけました。
年間払い込み保険料は3万6000円ですから所得税控除上限の4万円以内。
探せば意外にあるものです。でもそうなると、住民税は控除の上限を超えてしまいます。
保障がもっと欲しいという声も聞こえてきそうですが、日本は医療福祉制度が充実していて、国民皆保険のため窓口での負担額が少ないのが特徴です。
それでも負担額が高額になり一定額を超えた場合は、所得に応じて払い戻しがあります(高額療養費制度)。
また、万一のときは所得保障や遺族年金なども――。
そう考えると、控除額ギリギリで保険を設計しても無理はないといえるでしょう。
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